鳩頭の空中散歩

「皇室は市民の言うことを汲め」というのは、タチの悪いラーメン評論家と同じ

案の定、昨日は報道もゴシップもまとめてマスコミが皇室の例の件のこと一色。この件について、「賛成・反対・どちらでもない」のアンケートがあったら、「どうでもいい」と「恐れ多い」も足しといたほうがいいんじゃない?

さて。
一般人になった宮家のお嬢様とその旦那にとやかくいう気は毛頭無くて、むしろ気になったのは「税金払ってるのは我々市民なんだから皇室は市民の言うことを聞け」論調。

 イギリスの王室贔屓のメディアから出た報道らしいんだけど、日本のロイヤルファミリーの権威に危機という感覚が、イギリスの親ロイヤルファミリー派にはあるらしい。
 皇帝 [ emperor ] と呼べるのは日本の天皇ローマ法王だけで、king や load よりも格が上で、各国首相はおろかエリザベス女王も最敬礼する。天皇が親善訪問するというのは、キリスト教圏でローマ法王行幸するのと同格で、その外交上の意味合いや効果は実はとんでもないもの。外交戦略上の価値として無類の武器を、日本は持っているといえる。その皇室の維持費のコストパフォーマンスは、臨時国会開会を無視し続けた国会議員に歳費をくれてやるよりよほど良いと言える。なので、皇室に対して「税金泥棒」というのは無知無教養なお馬鹿さんだと白状しているようなもの。「税金払ってる市民が一番偉い」という、なにそのお客様は神様論法。本気で頭悪いんだろうか。
 民主政治において、市民は税金を払ってるから偉いんじゃないんです。まじで中学校公民から勉強し直せ。

ここらあたりの話は、古い記事だけど

<大人の無法地帯>
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(リンク先のエンコードの都合上、文字化けしていますが、正常です)

とか

www.news-postseven.com

を一読すると面白い。


ということで、皇室を重んじたい派としては、「恐れ多い」寄りの「どうでもいい」なんだけど、これまた気になったのが、奥様になられて渡米した後は、N.Y. メトロポリタン美術館のキュレーターのポストがあるとかないとか。

いやこれはさすがにちょっと。

 論文成果で割と簡単に学位が取れる自然科学系に対して、文系研究者が学位を取るのはすごく大変で、そもそもアカデミックポジション(アカポス)自体が自然科学系に比べて圧倒的に少ない。博物館や美術館の学芸員は数少ないアカポスで、文系でアカデミックを目指す人が憧れてやまないポジション。それを掻っ攫うのに皇室特権が無かったとは、まさか言うまい。
 いいんですよ、日本は民主主義ではあるが、どんなに崇高な理想の政治体制であっても完全フラットな平等なんてありえないし、どんなに取り繕おうと、皇室が存在する以上、フラットに平等性を求めること自体が無理だし、だからって外交戦略価値上、皇室をなくすことのほうがリスキーなので、皇室の方にはそこらへんの政治的価値をひっくるめて利益を享受してもらうことはあっていい。どこのキュレーターだろうとなんだろうと、特権を背景にお好きになさいませ。それが存在価値ですから。
 そのあたりを考慮した上で、昨日の会見全文を読むと、なかなかナチュラルにムカつくこと言ってんな、この人、皇室どうこう抜きにして一般人としてもこういうこと言っていると、付き合い考えようと思われるぞ。というのが本音。

みんな多分そこらへんは分かっていて、個人の資質に帰すべきではないという想いから「税金が云々…」に転嫁しているんだと思いたい。そうだよね?



「メトロポリタンのキュレーター」というワードからギャラリーフェイクのフジタを真っ先に連想するのは、間違ってないと思う。