鳩頭の空中散歩

Nice Presentation!

宿泊費は出してやるけど、交通費は自腹で来てね(•ө•)♡

な「名ばかり招待」の国際学会に招待されて、業績スカスカの底辺研究者には喉から手が出るほど欲しいハク付けの誘惑にまんまとひっかかり、参加登録したのが去年の夏。

アブスト、いつまでに出せばいい?」
「いつでもいいよー。できるだけ早くね。あ、あとツラの写真よこせや」

のやり取りで、顔写真とバイオグラフィだけ送っておいて、要旨は後回し、下から2番めの引き出しの一番奥くらいの優先順位にしていたら、世界中でCOVID-19が一向に終息する気配もなく、そうこうしているうちに日本でも第6波狂騒曲が流れ始め、出国はできても帰って来れない可能性も出てきたので、

「やっぱりやめるー。返金お願い」
と連絡して
「おk」
と返事が来たので、
この件を忘却の海の彼方に船出させたのが、今年の年明け。

そしたら、先月下旬の開催日程の4日前になって
「遠隔のスロットにぶちこんどいたから、確認しとけ。てめえのセクションのZoomアクセスはここな」
って、キャンセルって言ったじゃん!
どうやら、「現地参加キャンセル」というように伝わっていたらしく。

あれ?アブスト提出した覚えも無いんだが。
このあたりで、なんかやばいカンファに登録したんじゃなかろうかと思ったけど、すでに後の祭り。

期末試験の合間を縫って、プレゼン資料をやっつけで仕上げる。内容は、これまでに国内学会で発表したものをまとめて新知見を加えた程度で、令和4年度科研費申請に書いたのとほぼ同じものになるから、スピーチ原稿を作る程度でなんとかなる。

当日、セクションのミーティングルームに入って、最後から3番めの自分の順番まで他の発表を見ていた。
・・・・・・
あー、博士課程の月例報告会のほうが、よほど緊張感あるぞ、これは。
な内容で、「これならなんとかなる」と増長w

自分の番になって、
Thank you for introduction.
I hove serious difficulty in English conversation.
Comments and questions, please visit this e-mail.
「質問・ご意見・苦情、一切受け付けません」と前置きして言い逃げ作戦に出る。

個人的には、学会では参加者とじっくり議論できるポスターセッションのほうが好きなんだが、なぜか言い逃げできるオーラルのほうが評価点が高いのが不満。
ポスターは、貼り逃げするやつも居るから仕方がない。

学部・修士時代、学内一変人と名高かったアメリカ帰りの教授に鍛えられたおかげで、プレゼンだけはそこそこ得意だったりする。
インド人の英語くらいには聞こえるだろうというたどたどしい発音だが、国内学会で割と好評で関連論文も並程度のIFの雑誌数本に載った内容だし、プレゼン資料は、恩師直伝の、華美さはなくても目に優しい、自前テンプレを使用。資料だけでも、やっつけの割には「今日の他のプレゼン相手なら勝つる」という出来だったので、それなりにそつなくこなせた。時間も、言い逃げ前置き通りに質疑応答の時間を残さずにきっちりと枠内に収めたのは、趣味で参加しているICT関係の勉強会でのライトニングトークに鍛えられたのが大きい。

発表後、座長から
Nice Presentation!
と言われたのは、他のプレゼンターにはなかったので、素直に受け止めておこうと思った。

ハッタリも技術のうち

あまり詳しく書くと身バレしそうだが、科研費2019年度応募分で変更された、若手の応募資格に救われている。
「採択時点で39歳以下」
から
「学位取得後8年以内」
に変更されたことで、応募資格が復活した。
修士課程修了後に一度就職して博士課程に出戻り、在籍中につい脇見運転したせいで本筋の研究で結果が出ずに満期退学をし、学位無し助教をやりながら数年掛けて割と最近学位を取ったので、40を超えているが若手に応募できた。
ようやくそれらしい結果が出始めたのが2017年頃だが、基盤(C)でも厳しい状況で、どうせ出しても採択される見込みゼロの応募書類にモチベーションが上がるわけがない。
それが、2019年度募集の応募資格大改訂でまさかの若手応募資格復活。ちょいちょい論文も出始めていたので、モチベーションを奮い立たせて応募して、2019年度は採択された。

連携研究者の先生のご指導に助けられて、当初見込みとは少し方向性が変わったけど、次に繋がる結果も出せたので、2021年度も応募。
しかしこのとき、
hatoatama.hatenablog.com
でも触れた雇い止めの憂き目に会い、2021年度からの研究場所は未定の状態。

審査結果開示では、「研究課題の学術的重要性」は採択された課題の平均点を上回っていながら、研究遂行能力で大きく減点されていた。
要するに、
「研究の価値は認めるが、おまえには無理」
と言われたわけだ。

今年度、ようやく腰を落ち着けられる場所を確保して改めて応募。
2020年は場所も金も無かったので研究が進むわけがなく、応募内容自体は2021年度応募とほとんど同じだが、採択された。

科研費応募に実績が大事なのは、間違いではない。
だが、「実現可能な夢」を語るステージでもある。ある程度、役者魂がないといけない。
つまり、
Nice Presentation!
が必要だ。

同業者から見て
「すげえ研究だ!」
という人が、案外科研費を取れないのは、ここらへんにあることもある。
若手〜基盤(C)くらいまでなら、Nice Presentation!と言わせることを目標にするほうが良いと思う。
これには、審査者に向けて「噛んで含めるように」という要素も含む。

これがね、下手にプライドの高い、一流ラボを渡り歩いてきたポスドクあがりにはなかなか出来ない。
「うっかり大学に入っちゃった」レベルの学生もチラホラいる、地方底辺私立大学で下っ端をやって来た人のほうが、結構上手かったりする。

ポスドクあがりって、よくも悪くも研究にストイックで、ハッタリが下手というか、良しとしない人が多いんですよね。真面目すぎて。