鳩頭の空中散歩

アイドルにハマった話

久々の投稿である。
夏になると駄文を書きたくなるらしい。この1年で筆者自身の状況は大きく変わったのだが、変わることはすでに1年以上前から分かっていたことで別に感慨があるわけではない。

筆者は90年代の半分以上を大学生として過ごした。その頃のポップミュージックシーンは今に続くグループアイドルブームの先駆けとなるモーニング娘。がヒットしていた。
修士課程のときに研究室の野郎連中で学会に行くのに、金は無いけど時間はある学生のやることだから片道500km以上をボロ車に乗り合ってワイワイと出かけたときの思い出。研究室メンバーの一人がモーニング娘。の大ファンで、別の一人がSPEEDの大ファンだった。筆者ともう一人は芸能に大して関心がなかったので、メンバーの名前は知ってるし商店街の有線では常にここらへんが流れていたので楽曲も知ってるよ、でも歌割りはもちろん顔と名前も一致していない程度だった。
モー娘。ファンとSPEEDファンがそれぞれフェイバリットCDを車に持込み、8時間以上に渡るロングドライブの車内はモー娘。とSPEEDが入れ代わり立ち代わりの状態。二人ともファンではあるもののドルオタというほどでもなかったのでケンカにもならず、彼らが講釈してくれる解説はそこそこ楽しかった。

小室哲哉...だと...?

筆者は今で言うところの絵に書いたような「陰キャ」で「ハスって」いたので、ポップミュージックシーンにはついていけず関心がないフリをしていたが、それでも流れ込んでくるのは時流を代表する音楽である。今で言うなら米津玄師やOfficial髭男dismの楽曲を聞かない日がないくらいなのと同様に、当時は小室サウンドが絶えない日がなかった。小室哲哉は自身のグループの他に多くのグループに楽曲提供していたのだが、こう言うとファンに怒られることは承知で、いわゆる「ハンコ」であり、どこのグループの楽曲か全くわからないからただひたすら「小室サウンド」以上でも以下でもないというのが正直な感想。
その後、小室哲哉自身は色々あったのは皆さんのほうがよくご存知だろうし、むしろ小室アンチだった私にはどうでもいいので触れない。

そこに来て久しぶりに小室哲哉の名前を聞いたのは、乃木坂46の最新曲「Route 246」である。
いろいろな論評を読んでみると、小室世代にも突き刺さるあらたなファン層の獲得なるか、というものも散見された。小室アンチだった私にはそれこそどうでも良い話だけど、YouTubeでのテザーや地上波放送でも流れることが増えて嫌でも耳にする。そこで感じたのは「絶望」だった。
・・・ハンコのままやん・・・
20年以上も経ってまるで変わっていないのは、痛いを通り越してイラつきさえ覚えた。若かりし日の美しい思い出ではなく痛い思いのほうが想起された。

乃木坂46

モーニング娘。ブームの落ち着きと入れ替わるように台頭したのがAKB48で、AKBブームの真っ只中に同じく秋元康プロデュースで立ち上がったのが乃木坂46であるのは別に解説の必要もなかろう、私より世間のほうがよく知っているはずだ。
友人が大ファンだったモーニング娘。でさえメンバーの識別ができていなかったのに、AKBのメンバーの識別ができるわけがない。さらに、似たりよったりの「年頃の女の子の十把一絡げの束売り商法グループ」が増えたところで完全に関心の外。AKBのメンバーの誰が好きとかいう話題には完全についていけず、とりあえずよく目にする名前を挙げておくという程度では話に乗ったくらい。

そんな「陰キャ」で「ハスった」私が「アイドルにハマった話」になるのはどういうことか。

一昨年のこと、大学で講義をしているとき、担当の女子学生が妙に元気が無かった。距離感に気をつけなければならない、一歩間違えるとかなり危険な線にはなるが、「どしたん?なにかあったん?」と聞くと、「なぁちゃんが卒業するって…」と返ってきた。

ちょっと何言ってるのかわからない。

そこで、いろいろ情報収集に乗り出した。筆者は、一応、研究を生業にしている(いた)人間である。情報収集と整理・分析は、最低限の素養として持っているつもりではいる。

「なぁちゃん」。乃木坂46西野七瀬のことであるらしい。年頃の女の子だけあって可愛らしいのだが、線が細くて、繊細とか可憐というよりどことなく陰湿な印象さえ抱かせる感じの女性だった。
いくら芸能音痴とはいえ、乃木坂46白石麻衣くらいは名前と顔は知っている。超上から目線で言うと、白石麻衣は「美人だけど好みじゃない」のであまり関心もなかったのだが、西野七瀬白石麻衣とダブルエースと言われているらしい。
乃木坂46に対する認識は、2018年における関心のスタート地点でこの程度だった。

調べていくうちにいろいろ分かってくると、あとはハマるのは早かった。ただそれだけの話(笑)
あと、現在の居住地がテレビ東京番組が見れるので、乃木坂46欅坂46と、当時「けやき坂」であった日向坂46の冠番組が見れたこと。「けやき坂」だけは最後まで正体を理解できず、録画予約番組表の「ひらがな推し」がAKB商法便乗のグループのさらにパチもんの地下アイドルかと最後まで思っていたくらい。これは別で語りたい。
つまり、ニワカもニワカで、アイドルグループに対する世間一般の印象はこんなもんだということ。
年齢も年齢だし、そもそも年頃の女の子を束売りしたり物販で釣る商法そのものには反感を持っているので、ライブやら握手やらなんやらに乗るつもりは毛頭ないのだが。

推し1

長らく一緒に研究の仕事をしている人が、大抵の人が大阪の人に対して描いているであろう印象そのままの大阪人。明るくて頭の回転の早い、おしゃれで魅力的な女性である。
この印象そのままだったのが松村沙友理で、地頭のキレの良さに基づく対応力の高さ、普段から全力でアイドルであることを演じているからか、舞台演劇鑑賞が趣味でそれなりに一家言あるつもりの私が素人目に見ても女優としてのポテンシャルの高さがあり非常に魅力的。少々癖のあるくっきりとした濃いめの顔とスタイルの良い長身は、目線で演じることができるのでアップで抜かれても引きでも映え、映画向きだと思う。ニワカ乃木坂ファンなので、彼女のスキャンダルをリアルタイムでは知らないので、悪い印象はまったくない。一見、大阪人キャラを前面に出した明るいキャラクターも、彼女自身の本質ではないことも知れば魅力の一つ。

推し2

一番注目のメンバーを変えることを推し変というらしいが、もともと束売りしてるんだから、お気に入りが複数いても当然だろ?
ってことで、お気に入りその2が久保史緒里。最近、音楽番組でアイドルらしからぬ歌唱力を披露して一般層からも注目を集めた、若干19歳になったばかりの3期生メンバー。もはや最長老群の位置にある松村沙友理とは対局の若手のホープ
2018年半ばからのニワカファンなので3期生の加入とか知らないし、そもそもモー娘。やAKBにすら興味がなかったので、加入期という概念を理解したのは最近なんだけど。きっかけは、やはりなにかの音楽番組で、歌唱力上位メンバーとされる生田絵梨花衛藤美彩とともに出演して披露した「さらばシベリア鉄道」を聞いてから。

・・・普段大学生と接しているから気分だけは若いつもりでいたけど、たいがいおっさんだな・・・

女性アイドルとしては当代随一の多才な天才と評される生田絵梨花とは別の意味で、努力型の衣をまとった天才型。当代を代表するアイドルグループの一員になる時点で尋常ならざる努力だけでなく天賦と運賦を備えているのは間違いないけど、久保史緒里に関しては「尋常でない努力をできる天才」の印象で、研究者肌を感じさせ、同類としてのライバル意識というか尊敬の念すら覚える。
sakamichi48.blog.jp

「台本渡すと一読しただけで自分の中で答えが出せてかつ本番では台本に頼らない」
頭の良い子だという印象はあったけど、こういう評価が貰える人はそう居ない。

研究者肌の印象はまさにそのとおりで、加入前から熱心な乃木坂ファンであり、乃木坂46に関する知識量や観察眼、洞察の深さによるメンバー愛から「最強のガチオタ」と評されるのは非常に好印象。

けんきゅうのおしごと

研究者は論文を書いてナンボである。Publish or Perish(出版せよ、さもなくば破滅を)と言われる、それなりにシビアな世界である。
そもそも、Publishができる舞台に上がることがそんなに簡単ではない。不安定な立場で日々研究に勤しむポスドクは、いつかのメジャーデビューを夢見て路端でギターをかき鳴らすストリートミュージシャンとなにも変わるところはない。
その場所を維持することも簡単には行かない。そして、舞台にある大半も、世の中に対して毒にも薬にもならないどうでもいい鼻紙を、ただひたすら地位の維持のために出し続けている。CNSに載るような研究は、よほど良い研究メンバーや上司、才能だけでなく運を手にしなければほとんど叶わない。選抜メンバーに入るようなものだ。これは、他の業種でも言えることだが、アイドルグループと大差なんてない。
もともと探究心が強く情報収集・整理・分析能力に長けた研究者は、興味の方向がアイドルに向けばガチオタになるのはある意味当然の帰結
研究者の素養を持った子が憧れの対象の一員になり期別曲とはいえセンターを張ったのは、未だに研究者としての夢を捨てきれていない自分には眩しすぎる。しかも地頭の良さと努力を惜しまない姿勢には勝てそうにない。それが久保史緒里から目を離せない理由。

あと、久保史緒里の純和風な雰囲気と頭の良さの方向が高校のとき好きだった子にとてもよく似ているのは、非常にどうでも良い話。
写真のアングルによっては垂れ目気味の顔立ちもそっくりでドキッとしたおっさんの思い出。