鳩頭の空中散歩

【生田絵梨花】乃木坂46はもはや実家

 50音順で書いていこうと思っていたので早期に触れざるを得ないけど、正直これほど考察に困るメンバーもない。あらゆる方面で迸る才能と強烈なキャラクターはどこからどう切ればよいかが本当に分からないし、彼女をどう評価するかで自分も評価されるというのが非常に怖いメンバーである。

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 バイオグラフィーから見ていこう。
 と思ったけど、ちょっと本業が忙しいので後回しで後日アップすることにしてとりあえず晒しとく。
 あと本業絡みで頭がバグっていて思わず何度目の「死にたい」か状態なので、今のとこ何も言えねえ。

 ・・・と言ってもね・・・
 いくちゃんを分析するのは無理だわ。

【秋元真夏】そう言っても他に居ない

暇なのでニワカの坂ファンがメンバーについて独断と偏見で考察していく。基本的にグループを分けずに50音順。
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基本的に頭の良い子が好きです。



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 秋元真夏は頭の良さには定評のあるメンバー。ただ引っかかるのは、学校のお勉強はできるんだろうけど…という印象が強い。振りには強く黙り込んでしまうこと無く返球でき、耳に残る特徴的な声なので打てば響くと見られがちではあるが、芸風が狭いのは弱点。基本的に自分から話を振るときは自分の話題からだし、振られたときに自分の話題に持っていく強引さはやや鼻につくが、組立自体は下手ではない。加入時点から今に至るまで自らイメージを変えること無く、他者イメージも変わっていないのは、ある意味希少なメンバー。頭の鉢の大きさをよくいじられるし本人自らネタにするが、地方銀行統一CMを見れば分かる通り、スタイルはかなり良いが絶妙なバランスの頭身で幼さを感じさせるのが魅力の一つである。

 加入時年齢は18歳ちょうど。これは加入時年齢の平均が乃木坂より高い欅坂の加入時平均年齢も上回る。深川麻衣岩瀬佑美子という加入時に成人のメンバーも居たとは言え、生田絵梨花星野みなみ樋口日奈和田まあや川後陽菜あたりの中学生メンバーも多く乃木坂1期生の加入時平均年齢が16.0歳であり、中核層は「花の94年組」と言われる94年学年生を中心とした層であることを考えると、当初から年長組に入る。学年で言えば高山一実斉藤優里と同じで、白石麻衣橋本奈々未松村沙友理の1学年下になる。
 加入直後から学業のために休業し1.5期扱いで4thシングルでいきなり選抜入り、あおりを食らった西野七瀬と確執を生じたというのは、ニワカファンの後付け知識。確執をすべて受入た上で誰も悪く言わず信頼関係を築き上げ、今やメンバーの誰からも慕われるグループの功労者になっていることはファンなら知るところであり、彼女の人柄を語る上で外せないエピソードとなっている。このエピソードもあって、本人が演出したがる家庭的なイメージと相まってしっかり者のイメージを抱かせるのは、自分の立ち位置を理解しきった上でセルフプロデュースが上手いことの証左である。基本的に、ぶりっ子キャラというのは頭が良くなければ成立しない。自分の立ち位置、自己イメージ、他者イメージがすべて噛み合わないと成立しない高等芸である。ぶりっ子キャラに本当に造形から美しい美人が居ないのはその証拠。美人は立ち位置と他者イメージからぶりっ子をする必要はない。また、ぶりっ子は同性からはまず嫌われるので、乃木坂46がファン層が圧倒的に男性寄りであるグループであることを理解しきっている。

 ここで、男性と女性の決定的な差として、ケンカの仕方がある。グループアイドルを考察する上で重要なのは女性と男性のケンカの仕方の差を理解することで、これを理解しなければなぜ運営推しと干されが出るのかが理解できない。
 ケンカの勝敗を決めるのは力関係であることは男性も女性も同じだが、男性の力関係は単純に力量で決まることが多い一方、女性の力関係は「味方の数」で決まることが多い。また、ケンカに勝つためには相手にもある程度力量があることを認めることによって、より勝利が確実となる。これはアメリカ人のメンタルに特に顕著に観察され、ハリウッド映画ではよく見られる。「やつらは強かった。そいつらをぶっ倒した俺らはもっと強かった」。こういう視点でハリウッド映画を眺めるとなかなか面白い。強い相手に対して確実にマウンティングすることでケンカの勝利は確実となり、そのためには敵に対して適度なリスペクトが必要である。
 ここにハマったのがAKB48で、「クラスの5番目くらいの子」を集めたというコンセプトは、「かわいいんだけどうちらでも勝てる」という、適度なリスペクトとマウンティングを同時に満たせる存在として女性ファンをある程度獲得している。一方で乃木坂46は「教室で目立たないけどよく見るとすげえ美人」という、大方の男性がハマる属性を持った女の子を集めている。秋元康マジで天才だわと思うのがここらへん。売り込み対象がAKB48乃木坂46では根本的に異なり、男性目線なのが乃木坂46でファン層もそこにある。男性層を狙った乃木坂では男性を味方につけたほうが強い。

 女性には鼻につくぶりっ子キャラ売りも、乃木坂ファン層にはすっぽりハマる。秋元真夏が自分をはめたのはその位置で、乃木坂46というハコの性質を理解しきった上でのしたたかさであり、それが一番あざとい。秋元真夏は、生来の頭の良さで乃木坂46の性質を見抜きファン層の中核を味方につけ運営に勝負を挑んだ結果、今の地位を獲得している。その前提として、メンバーからも慕われている人柄があるのは言うまでもない。
 一方で本業であるパフォーマンスに関しては、本人がネタにしている通り壊滅的な歌唱力とダンスである。自分の立ち位置はあざといキャラでのバラエティ路線しかないことを理解して活路を開いている。加入当初から相対的に年長であったことで若さ勝負に出ずしっかり者イメージを押し出しているのも、立ち位置の理解とプロデュースが上手い。もっとも、AKB48という先達に若手も増えたし当初から相対的に年長であったことに加えて休業スタートだったので、若さ勝負という道は最初から無かったのだが。

 そんな秋元真夏が、パフォーマンスに定評がありビジュアルでも上位だった桜井玲香の卒業に伴い2代目キャプテンに就任したのが、2019年8月。すでに4期生も加入し3期生も主力になりつつある中で年上へのキャプテン移譲という異例の采配はファンの間でも物議を醸した。桜井玲香は中核の花の94年組の一人であり年長層ではなかったので年長でなければキャプテンが務まらないということは無く、パフォーマンスが重視されるのであれば同じく94年組でパフォーマンスと頭の良さに定評がありキャラクターもしっかりしている中田花奈や、選抜経験こそ無いものの同じくパフォーマンスに優れた2期生の伊藤純奈山崎怜奈も居た。3期生では、ヤンキーっぽい見た目に反しておとなしく真面目なしっかり者で、乃木坂工事中では設楽のお気に入りにもなっていた梅澤美波を次期キャプテンに推す声は強かったし、一時休業をしたものの圧倒的なパフォーマンスが注目されつつも控えめで謙虚な性格からあまり前面に出て来ず、人気面で大園桃子与田祐希に隠れて才能を秘めた隠れた美少女という立ち位置だった久保史緒里に注目する声もあった。ここはやはり秋元真夏自身の人柄によるところが大きいのはあるにしても、釈然としない感を残したのも確かである。
 さらに悪いことに、キャプテン就任後の秋元真夏は「キャプテンの秋元真夏です」というキャプテン主張芸を追加実装した。桜井玲香はキャプテンとして対外的に出ることはほとんど無く、もともと話術に長けた秋元真夏が村外仕事では広報的な役割を与えられることが多く、冠番組以外の出演では「センター・エース・秋元」というパターンがよく見られた。つまり乃木坂46においてはキャプテンはグループ内のポジションであり対外的には役割はないものであったが、秋元真夏はグループ内キャプテン・対外広報部長の両方の役割を負うことになった。ここで対外広報部長を他のメンバーに引き継げればよかったのだが、運営はそれをしなかった。正確には、秋元真夏に替わる広報能力を持ったメンバーが居なかった。結果、秋元真夏本来の持ち芸である「私が」に、「キャプテンです」が追加される羽目になる。秋元真夏の自己主張芸に慣れたオタク層にはそれも持ち味と映るが、ビジュアル的にさして秀でているわけでもない秋元真夏の「キャプテンの秋元真夏です」連呼は、軽い違和感とともに鼻につく。これは彼女にとって非常に不幸だと思う。

 では、秋元真夏本来の実務的な能力を生かした広報の役割を活かしつつ現在の不幸な状況を回避するためにはどうすれば良いかといえば、やはり秋元真夏以外にキャプテン適任者は居ないかということになる。ファンからも推す声が多かった梅澤美波は間違いなく適任者の一人であろう。長身でスタイルの良い彼女は近日写真集が発売されることにもなっており、女性ファンを獲得しやすい。加入当初は身長以外に注目されることがあまり無く、3期生売り込み期間中も決して優遇されていなかったが、真面目で努力家でアンダーから主力にのし上がった実力者でもある。

 さてここで、そうは言っても秋元真夏以外にキャプテンはやはり難しかろうと言うには、一人のメンバーに注目する必要がある。現エース、齋藤飛鳥である。
 コロナ禍によるリモート収録を経てスタジオ収録を再開した乃木坂工事中であるが、リモート収録開けのスタジオ企画は「内輪受けモノマネ企画」だった。乃木坂工事中でも人気で普段注目されにくいアンダーメンバーが表に出てこれる企画であり、その代表格が和田まあやである。過去の内輪モノマネでは和田まあやが連覇している。今回の企画では、3期生の山下美月齋藤飛鳥のモノマネを披露した。同期内でモノマネをするのが定番で、先輩いじりは極めて異例であった。山下美月のモノマネ披露に対する齋藤飛鳥の反応は、完全な先輩風であった。それもかなり嫌な。このときの齋藤飛鳥のレスポンスは日向坂46ではまず見られないと予想される。日向坂46は運動部や吹奏楽の経験者で揃えており、欅坂46の下部組織という出自もあってノリが全体的に体育会系である。体育会系は基本的に年功序列ではあるが実力尊重であり、年齢や経験という覆せない要因のみには従わない上で先輩を立てることが身についている。文化系にはこれがない。齋藤飛鳥の「何年先輩?」という反応は、まさに文化系のそれであった。台本があるにしてもこれはまずい。文化系おとなしめ女子で揃えた乃木坂ではリアルすぎて一種の弊害であろう。
 齋藤飛鳥が結成当初からのメンバーでアンダーからのし上がった実力者であることは確かである。しかし、最年少としてお姉さんメンバーに庇護されながら芽吹いたメンバーであることは古参のファンからよく聞く。育ちもあろう、やってもらうことが当たり前という意識が強い。なので、後輩から見せ場をもらったという方向に意識が向かないし、年上の言うことしか聞かない。とは言っても、現在では押しも押されもせぬエース。後輩・年下の言うことは絶対に聞かないであろうエースを制御できるのは先輩で年長者しかいない。

 ごめんね、誕生日に悪口ばっかり言ってるようで。加入時に13歳になったばかりで、今日22歳になったばかり。

 中学〜高校〜大学で学生生活を謳歌して知識も経験も蓄積される期間をまるごと芸能界で過ごしていて、一般人が経験できない経験をいっぱいしているだろうけど、同時に色々と弊害も生じているだろう。これはジャニーズでも時々問題になる芸能界の構造的な問題。

 まだ若年の部類に入る齋藤飛鳥よりも年上のメンバーは何人か居るが、1期生からしか選べないとなると、白石麻衣にキャプテンの素養があったらとっくにキャプテンをやっているし、第一もう卒業する。高山一実松村沙友理は、本人がガラじゃないと言うのは目に見えている。松村沙友理は禊は済んでいるとは思うが前科があるし、高山一実はキャプテンの素養が非常に高いのだが現状最も卒業に近いメンバー。結果、消去法的に秋元真夏しか残らないし、幸か不幸か、秋元真夏自身にキャプテン適性が決して無いわけではない。

つまりね、まなったん
キャプテン主張芸はもうちょっと控えたらもっと良いと思うよ。

データで見る坂道グループ

 最近、データサイエンスと言えるほどではないけれど数値データの傾向解析が面白くて色々やっている。エクセルでデータをあれこれやってみる程度ではあるが、エクセルでやっていることをPythonで書くにはどうするか考えたり、VBAPythonに書き換えてみるとかしてPythonの勉強にもなってなかなか楽しい。
 色々あってイロイロ暇なので、アイドルで遊んでみた話。

 エクセル計算式で書くと鬼畜のIFネストが必要となりIFS関数実装以前のバージョンでは軽く頭が沸騰しそうな複数条件の掛け合わせと日付演算をPython化する練習として、エクセル関数を使って坂道3グループのデータ解析で遊んでみた。楽曲売上等は全然わからないので、メンバーのバイオグラフィーを3坂串刺しで見てみただけ。
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 3坂それぞれの熱心なオタはいがみ合ってることが多いのかな、ネットを見ると。特に乃木坂オタと欅オタはお互いにケヤカス・ノギカス呼ばわりして罵り合っているのが非常に醜い。私はニワカなのでそれぞれのグループに深入りするほどよく知らないしどこにも嫌悪感もない。それに、3坂を俯瞰した考察というのは案外少ないようだ。
 そこで、生年月日と出身地、各グループの期別の加入日、卒業等の離脱年月日をクエリとしてグループに関係なく50音順でメンバーを並べたエクセルDBを作ってみた。後ほどPythonで書き直してみるとして、現在年齢と加入時年齢、離脱時年齢および活動期間を算出して解析してみた。データは2020年8月9日時点のものであり、卒業を発表しているがグループ活動を終了していない白石麻衣中田花奈は現役生として解析している。松井玲奈は解析に入っていたりいなかったりなので、もともと厳密なものではない。
 データは各グループ公式サイトおよびエケペディアを参考とした。

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www.keyakizaka46.com
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48pedia.org


現役メンバー

 年長のベテランメンバーが目立つので乃木坂が一番平均年齢が高いのかと思ったらそうでもなかった。乃木坂と欅坂では平均年齢に有意な差はない。

平均年齢(2020年8月現在)

  • 日向坂46 20歳0箇月
  • 坂道全体  20歳10箇月 

年齢分布

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図1-A. 3坂グループ全体の年齢分布
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図1-B. 乃木坂46の年齢分布
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図1-C. 欅坂46の年齢分布
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図1-D. 日向坂46の年齢分布
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表1. 3坂のメンバーを若年からソートした結果

 乃木坂46は最高齢メンバーを抱えるものの若年層が厚いことで全体の平均年齢が下がっている。3期・4期の加入で若返りを図っているように見えるので、各グループごとで加入期別の平均年齢を求めてみた。

加入期別平均年齢

乃木坂46
  • 1期  24歳9.6箇月(10人)
  • 2期  23歳1.6箇月(8人)
  • 3期  20歳4.8箇月(12人)
  • 4期  18歳5.6箇月(11人)
  • 新4期 18歳1.0箇月(5人)
欅坂46
  • 1期  22歳9.2箇月(13人)
  • 2期  19歳8.7箇月(9人)
  • 新2期 19歳9.8箇月(6人)
日向坂46
  • 1期  21歳11.8箇月(9人)
  • 2期  19歳6.0箇月(9人)
  • 3期  16歳3.0箇月(1人)
  • 新3期 16歳6.7箇月(3人)

 やはり、各グループとも新規加入で平均年齢を押し下げているのが分かる。
 そこで加入時の年齢を求めてみた。乃木坂2期生は研修生から昇格した時点とし、乃木坂新4期・欅坂新2期・日向坂新3期は配属先発表日とした。加入時年齢は卒業等による離脱者も集計対象とした。

加入時平均年齢

乃木坂46
  • 1期  16歳0.1箇月(36人)
  • 2期  16歳4.4箇月(14人)
  • 3期  16歳5.3箇月(12人)
  • 4期  16歳9.0箇月(11人)
  • 新4期 17歳7.0箇月(5人)
欅坂46
  • 1期  17歳4.4箇月(21人)
  • 1.5期  17歳2.0箇月(1人)
  • 2期  18歳0.3箇月(9人)
  • 新2期 19歳4.2箇月(6人)
日向坂46
  • 1期  17歳8.1箇月(11人)
  • 2期  16歳6.0箇月(9人)
  • 3期  14歳7.0箇月(1人)
  • 新3期 16歳0.7箇月(3人)
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表2. 3坂のメンバーを加入時年齢で若年からソートした結果

 これを見ると、乃木坂46欅坂46の方向性の差が見えてくる。
 メンバーを加入時年齢の若年順にソートすると、紫と水色が上に寄り緑が下に寄る傾向がはっきりと出る。
 欅坂は平手友梨奈を中心としたアーティスト路線で「大人に反抗する少女たち」というカラーが与えられたが、オーディションで選抜されたメンバーは2学年近く乃木坂加入者を上回る。乃木坂新4期、欅坂新2期の年齢層が高いことに目が行くが、研修生で1年以上塩漬けにされていたので坂道合同オーディション合格時点での年齢は他の期とほぼ変わらない。研修生から各グループに配属するときもやはり欅坂には若干高めの層が割り振られている。
 乃木坂1期生が3グループ各期の中で最も若いうちに集められているのは、そこらの十把一絡げではなく本腰入れて長い目で育てるつもりが最初からあったと好意的に解釈できるか。
 一方、欅坂は乃木坂が経験したドサ回りじみた下積みを経ること無くいきなりスタートダッシュかましている。そのためにはある程度下地ができていることが必要だっただろうし、そのために身体もできあがっている年代を集めたというのは考えすぎだろうか。男子はこのあたりの年齢で急速に身体ができてくるが、女子はだいたい中学生の間くらいである程度身体ができるので高校生くらいでは成長途上の男子より仕上がっている。
 また、欅坂の結成は乃木坂に遅れること4年で、乃木坂1期生オーディション通過を逃した人が欅坂1期生の対象年齢層に適合した可能性もある。欅坂オーディションに応募した女の子たちの中には乃木坂ファン層も居て「乃木坂みたいになりたい」と夢見て応募してメンバーの座を勝ち取ったのに、乃木坂とはまるで異なる路線のグループだった結果アレコレという話は見たりするが、うん、まあ、当事者でもないし当時をリアルタイムで知らないのでよく知らない。

離脱メンバー

離脱時平均年齢と活動期間平均

 では、下は中学生くらいで加入してどのくらい続けるのか。加入時年齢による離脱時期の傾向はあるのかを見てみよう。加入年齢が高いほど長く居座るとかいう傾向があればなかなか面白いかもね。
 ただしこの解析は活動辞退による1年未満の離脱も集計しているのでノイズが大きい。また、欅坂離脱者は聞き齧りするかぎりあまり円満な離脱をしていなさそうなので、行動傾向を拾えるかどうかは怪しいところ。一応、こういう視点でもクライテリアを切ってみたよ、ということで。

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表3. 離脱者一覧(離脱年月日、離脱時年齢、活動期間)
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図2. 加入時年齢と離脱率

 興味深いことに、15歳で加入したメンバーの離脱率が突出して高く、50%に及ぶ。
 では、どのくらいの期間活動して離脱するのだろうか。

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図3. 活動期間(※活動辞退を含む)
乃木坂46

・1期(24人)
 離脱時年齢平均    :22歳3.8箇月
 離脱までの平均活動期間:5年4.4箇月
  ※ 契約解除を含む
  ※※ 活動辞退を除く

・2期(3人)
 離脱時年齢平均    :22歳8.3箇月
 離脱までの平均活動期間:6年0箇月
  ※ 活動辞退を除く

・3期
 離脱なし

・4,N4期
 離脱なし

欅坂46

・1期(8人)
 離脱時年齢平均    :20歳6.6箇月
 離脱までの平均活動期間:3年11.1箇月
  ※ 活動辞退を除く

・1.5期(1人)
 離脱時年齢平均    :20歳10.0箇月
 離脱までの平均活動期間:3年8.0箇月

・2,N2期
 離脱なし

日向坂46

・1期(2人)
 離脱時年齢平均    :20歳11.5箇月
 離脱までの平均活動期間:3年6.0箇月
  ※ けやき坂46からの通算

・2期
 離脱なし

・3,N3期
 離脱なし

 この分析結果を以ってしてどこのグループがどうとか言うつもりもないしその根拠にすらならないが、乃木坂2期生は本当に根性があると思う。

 もう少し掘り下げてみよう。

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図4. 加入時年齢別活動期間

 図4.を見ると、加入時の年齢によって離脱までの活動期間にある種の傾向があることが読み取れる。ただ、6年以上継続しているグループは乃木坂だけだし、活動辞退も含むのであまり当てにならないが。
 15歳以下、つまり中学生のうちに加入したメンバーは6年以上活動する傾向があるが、一方で15-16歳、高校入学に合わせたタイミングで加入したメンバーは4年未満で離脱している。それ以上の年齢になると4年以上、さらにもっと長期に渡って活動を続ける傾向がある。
 高校入学のタイミングで加入し3年ほどで辞めてしまうのは、進学や他の職業への進路の影響が大きいだろう。ただ、その境を超えると逆に6年以上長く活動する傾向が見られる。
 別の見方もできる。中学生で加入したメンバーはアイドル稼業を幼い頃からの夢として実現した以上、ある種の職業意識が早いうちに醸成されていると考えられる。また、アイドル稼業は潰しが効くものではない。そのため、プロとして居続けるか、あるいは他に道がなくなってしまっているか。
 一方で、中学卒業や高校入学のタイミングで加入したメンバーは、おそらくその先をその時点で見据えている者もあろう。あるいは、グループアイドル活動を校外部活動のような感覚で捉えている者もいるかもしれない。特に乃木坂や日向坂が少なくとも外部に対して感じさせるアットホームな雰囲気は、部活的でもある。
 17歳以上で加入した者は、大学に進学して二足のわらじを履く者と、プロ芸能者として生きる方向を目指す者に分かれているような気がする。いずれも腰を据えて長く活動する傾向が見られる。

 まあ、あくまでもデータから推測する傾向であり、もちろんメンバー個々人が考えることは到底わからない。
 ただこれだけは言っておこう。

いつまでも
 居ると思うな
  親と推し



その他の傾向解析

出身地

 卒業生を含めて3グループまとめて出身地を分析。

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図5. 出身地(国内) 離脱者を含む

 日向坂は母数が少ないので参考程度にしかならないけど、3グループ総計140人のうち79人が乃木坂なので、乃木坂に関してはかなり精度の高いデータとなる。これを見ると、乃木坂46が東日本出身者に偏重したグループであることが分かる。興味深いのは、欅坂46に関西出身メンが乃木坂に対してかなり多いということだ。
 しかし、これをさらに解析するとこうなる。

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表4. 坂道メンバー出身地一覧

 表4は、メンバーの出身地を都道府県コード順にソートしたもの。北から順に8地方区分に並ぶ。
 この表からも乃木坂が東日本偏重なのが分かるが、欅坂で関西出身メンバーはほぼ2期生で、1期生には関西出身はほとんど居ない。欅坂は1期生と2期生でキャラクターがかなり違うことが知られているが、これだけ地域性に偏りがあるとさもありなんという気はする。

 ビジュアルの乃木坂、パフォーマンスの欅坂という売り込み方をされたせいか、欅坂がビジュアルグループだという認識はあまりされていない。しかし、はっきり言って欅坂のほうが美人が多いと思う。美人名産地である東北と九州の出身者比率が高いのも、乃木坂と欅坂で共通した傾向なのかな?

で・・・?

Pythonについて遊びながら勉強するつもりが、完全に遊びにしかならんかった。

もう一度、声を大にして言っておこう。


推しは推せるうちに推せ

贈り物としての万年筆

万年筆は贈り物としての定番度は比較的高く、実際によく出るのは春先だそうだ。そのセオリーだと今の時期はちょうど谷間で、セールやキャンペーンもやっていない「今は時期じゃないもう少し待て」という時期。まあ、時期になってもセールをやることもあまり無いんだけど。

見た目価格

 100均のプラ製品や食器って、なんでワンポイントがわざわざ印刷してあったりするんだろう? あのぶん原価がかかってる気がするんだけど、あのワンポイントが安っぽさ感を遺憾無く発揮し100均製品マニア心をくすぐる。
 陶芸市などで、一見地味な茶碗が他よりゼロが2つ多かったというのはよくある。なんとなく漂う本物感と言うか、魂は細部に宿ると言うか。時計やネクタイ、ハンカチなどもそうで、「なんか良い」とピンとくるものはパッと見案外地味だ。スーツとかも、パッと見地味だけど全体的になんか良いという感じのものは、細部をよく見ると生地や仕立てが良い。こういうのは玄人でなくても案外分かるものだ。他にも例を挙げると枚挙にいとまが無く、ニトリの家具はやっぱりニトリなりだし、IKEAは店舗がオサレ感なだけで製品はそれなり品質なのがやはり分かる。それでもホームセンターの片隅よりよほど良い品なのはやはり専門店だけある。O塚家具? あえて言及を避けるw
 アクセサリーなど、自分が使わないものでも価格なりの品位はなんとなく分かるもので、「あ、これ良いな」と思ったら贈り物としては相手次第ではドン引きされ得る価格だったりする。

ブランドの価値

 さて、万年筆だ。
 これは見た目価格が非常に分かりにくい。この一因として、国産万年筆の値付けの弱さ、舶来品の値段の法外さがある。逆に言えば、良いものを相手に気負わせずに贈ることができるものでもある。
 実際に使ってみると文具としての実用度、使い勝手の良さ、楽さは実感できるものの、カーボンコピー用紙に使えないから宅配便の伝票を書くことはできないなど、それなりに制約もありボールペンほどの汎用性は無い。ボールペンは、昔はインクがネチャついていたが、今やジェットストリームに代表される新世代油性インクボールペンの書き味は万年筆に比べて遜色がない。と言うか、単に性能で筆記具を語るなら国産ボールペンが最高だ。だからわざわざ万年筆を買って使う人はそんなに居ない。そういう意味では贈り物に適している。

 万年筆ファンは少なく無く、ネットを徘徊すると愛に溢れたファンの声はいくらでも見つかる。しかし、贈り物視点は案外少ない。そういう視点で探すと、伊東屋やペンハウスなどの通販も手がける万年筆ショップしか引っかからないこともある。ここら辺は商売でやっているので少し感覚的に違う。例えば、万年筆を女性に贈るならパーカーのソネットが定番とか書いてあるけど、ちょっと引かれるレベルの価格だったりする。この値段だったら他にもっと選びようがあるよ。
 そもそも忘れてはならないのが、万年筆はあくまでも実用品であるということだ。しかし汎用性が弱い。だから同じ筆記具を贈るなら高級ボールペンの方が実用性の上でも良いし、同じブランドの同じシリーズで万年筆とボールペンをラインナップしていたらボールペンの方が値段的には妥当だ。万年筆より高級ボールペンのほうが、価格の割に高級感が高い。
 それでも敢えて万年筆を贈るとすれば、「実用的だから」「コスパが良いから」ではなく「あなたに贈りたい」という気持ちが何よりもその理由になる。万年筆は機能的にはペン芯とペン先だけなので、軸のデザインは使い勝手に直結するもののほぼ100%趣味だ。贈り物としての難しさはそこにある。ただこれはネクタイも同じだから贈りたい人のイメージで選んでしまえば良い。そこで手がかりになるのが、他の贈り物品でもそうだけど、定番ブランドということになる。

 贈られる人にとって「ブランドは聞いたことあるけど正直よく知らない」というのは贈り物には有利な要素。
「有名ブランドだけど値段はそうでもないのよ、気にせずに受け取って」
(実は結構なお値段です)

というのも良いし、
「やっぱり大人はこれくらい持っておかないとね」
(心の声:値段はそれほどでもないけど有名ブランド品で高級に見える。ドヤ!)

というのも良い。この視点から、メジャーブランドの中から独断と偏見で贈り物視点でおすすめブランドを挙げてみる。

ポイント

  • あくまでも一般的にメジャーであること

  「万年筆ファンなら知ってるよね」レベルのブランドはやめとこう。
  非趣味者が「聞いたことは無くは無い」程度の知名度のブランドは
  そんなに多くありません。

  • 見たら分かる

  明確なブランドシンボルがあること。マニアならシルエットで判断できる
  なんてレベルのブランドは排除。
  「良い物使ってるね」と言われるようにしてあげたいじゃないですか。

  • 入手性の良さ

  受注生産限定ブランドなんかに用はありません。ラインナップも重視。



オススメブランド

海外ブランド

パーカー

www.parkerpen.com

 クリップの矢羽のレリーフがシンボルで、世界のVIPが愛用する場面がよく見られるブランド。胸ポケットに刺すと矢羽のクリップが見える程度の主張の激しくないブランドシンボルは魅力。歴史のあるブランドで、第二次世界大戦の停戦文書を調印するときに使われ「平和のペン」と呼ばれたというエピソードがあるデュアフォールドのようなマッチョで男性的なイメージのモデルから、コンパクトでスマートな働く女性のイメージシンボルでもあったパーカー75のようなモデルまで、ラインナップに隙が無い。比較的手に届きやすい値段のシリーズにはカラフルで機能的なフレッシュなデザインのモデルもあり、贈る相手をイメージして選びやすい。インクカートリッジは独自規格だが入手性は良い。パーカー75は、限定モデルからビンテージまで幅広く何本あっても飽きない。
 ただ最近は万年筆より5thに注力している節があり、モンブラン同様に最近の品質に疑問の声もある。値段的にも程よくカラフルでフレッシュなモデルもあるとは書いたが、この辺のモデルはどうもアメリカンなギャルっちいイメージが拭えず、正直値段なりの価値があるかどうかは個人的には疑問。逆に言えば好みを激しく選ぶとも言え、ハマればとても良い贈り物になると思う。

ペリカン

www.ito-ya.co.jp

 モンブランが装飾品化してしまっているので、ステッドラーファーバーカステルに並ぶドイツ製実用文具ブランドの一角。「○チ○の技術は世界一イイイイィィィィ!!!!」ノリのドイツ製のイメージ通りの精密感が魅力のステッドラーも捨てがたいが、ここは黒い森と文学のイメージを漂わせるペリカンを推したい。天冠に刻まれるペリカンの親子のレリーフは細かくマイナーチェンジをしていて、マニアが見ればいつ頃の年代の製品か分かるそうだが、そんなのどうでもいい。このブランドシンボルだけで所有の満足感がある。一般的にはあまりメジャーではないので、わりと主張の激しいブランドシンボルながら嫌味がない。
 ラインナップは基本的に大きさの差だけでデザインは統一されているので迷うことが無い。大きさでスーベレーンM400かM800を選んでおけば間違いはない。男性だからといってM400が小さすぎるということも、女性にはM800は大きすぎるということも無いが、男性にはM800、女性にはM400、間を取ってM600ならどっちでも良いかなという感じ。が、M600はコンパクトで実用的なM400でも重厚感がありじっくり物書きに向くM800のどちらでも無く一番中途半端なので、M400かM800のどちらかに振り切りたい。M400はキャップしたときの大きさがパイロットのプレラとほぼ同じ、M800はその1.5倍とイメージしたら良い。
 ストライプ柄が定番だが、M800は毎年限定モデルが出る。これがまた趣味がよく、当たり外れがあまりないのもこのブランドの魅力。限定モデルと通常モデルの値段差もあまり無いので、贈る人のイメージで選びやすい。全体的に決して安くはないブランドだが、M200なら手頃。M200はM400と同じサイズでニブがステンレスなだけ。このニブが、金ニブじゃなくてもいいよねと言える非常に良い書き味。M200も毎年限定モデルが出る。個人的にはベスト オブ オススメブランド。

ウォーターマン

www.waterman.com

 フランスのブランドだが創業者はアメリカ人というのがパーカーと共通で、現在では同じグループの兄弟会社になっている。もともとお互いに独自規格路線を突っ走っているメーカーなのでグループ統合でなんだかんだあったりインクが昔と違っていたりするそうだが、そんなのシラネ。
 パーカーが創業者の色が濃くアメリカンな雰囲気なのに対して、ウォーターマンはヨーロピアンな雰囲気を纏う。ドイツ製品とは明らかに違う「おフランスな香り」がこのブランドの最大の特徴であり魅力。クリップにブランドシンボルがあるのもパーカーと共通。ウォーターマンは穴が空いたクリップで、胸ポケットに刺すと穴から生地が見えるのがとてもおしゃれ。ペンをファッションの一部にしてしまうあたりがさすがモードの国の製品という感じ。個人的には、スーツをバシッと決めた女性の胸ポケットに入っているところを見たいですw クセのあるデザインのモデルが多く、贈り物にするなら一緒に選びたいところ。サプライズプレゼントよりも記念日デートのプレゼントにしたいですね。←という妄想
 全体的にかなりお高めで入手性も良くないしメジャーブランドとは言い難いが、万年筆を発明したメーカーというエピソードは強い。

国産ブランド

 ここからは国産ブランド。と言ってもメジャーな国産ブランドはセーラー・プラチナ・パイロットくらいなので、この3ブランドの特徴とオススメモデルを挙げる。
 素人がガタガタ言うより
 https://muuseo.com/square/articles/300
 ここを見たほうがよほど確かなんだけどね。

セーラー万年筆

www.sailor.co.jp

 セーラーは国産3ブランドの中では最も弱小だけど、歴史は最も長い。広島の呉にあるメーカーで、現在では工業用ロボットが主力製品になっているが、軍都廣島と軍港・造船の街の呉の産業を支え続けてきた職人気質のメーカーで、まるで下町の鉄工所のようなノリでチャレンジングに突っ走るのがとても好き。やりすぎて在庫不安定や受注停止とかよくやるのはご愛嬌。オリジナリティは最も高く、変に外国製コンプレックスとか無い王道の国産を突き進む傾向があり日本語文字と相性が良い。「まるで毛筆」別名「変態ニブ」と言われる特殊ニブは受注が不安定なこともあって贈り物としては手を出さないのが吉。
 ラインナップの豊富さを言い出したらパイロットに勝てるわけがないけれど、国外ブランドに比べたら遥かに豊富で入門モデルから高級モデルまで幅広い。バランス型(両端が丸い)モデルはクリップに、ベスト型(両端が切り落とし)モデルは天冠に錨のレリーフが入る。ベスト型のプロフェッショナルギアは、The 国産万年筆の最高のデザインの一つだと思ってる。全体的に渋めといえば聞こえは良いけど正直ダサいのは広島という土地柄か。
 「若者向け」と自称するにはどうかと思うけど、レグラス万年筆のバランスの良さと書き味はちょっと感動した。これで中字ペン先があればより良いとは思ったけど、国産万年筆の細字ペン先の繊細さはミドルレンジの価格帯のレグラスでも味わえる。セーラーの万年筆はこのレグラスと四季織を持っているけど、価格帯が同程度だからペン先も同じだろうと思っていたら全然違ってた。当然書き味も全然違う。こういう真似はパイロットなら絶対にやらない。「同じペン先で軸のデザインだけ違う」というラインナップなら趣味で選べるけど、万年筆の本体であるペン先が各モデルで違うというとんでもないことをしてくれるので、贈り物としては非常に選びにくい。だがそこがいい。

プラチナ万年筆

www.platinum-pen.co.jp

 個人的にはここはあんまり好みではないのだが、今回は贈り物として考察するということで。
 良くも悪くもクセがないのと、限定モデル出しすぎ。限定モデルをよく出すから2本目以降の人にも贈りやすいというのはある。メインストリームの定番モデルであるセンチュリー #3776の限定モデルを選んでおけばいいよ。で話が終わってしまう。書き味はクセがなく好き嫌いは出にくいし、国産らしく品質のばらつきも無くて扱っている店も多いから通販ではなく実際に見て買うと良いよ。以上。
 だと身も蓋もないので、少し解説。
 「スリップシール機構」という、ペン先の乾燥を防ぐバネ仕掛けのメカをキャップに組み込んでいるのが特徴。そもそもねじ式は嵌合式よりも気密性が高くスリップシール機構なんて要らないと思う。プラチナの万年筆はキャップの回転数が多く、ペリカンよりもキャップを外すのが手間なのに、ペリカンのほうがペン先が乾燥せずインクの持ちが良い。工作精度の高さが国産品の真骨頂だと思うけど、プラチナのキャップに関しては疑問。最低価格モデルのプレピーにもスリップシール機構を仕込んでいるあたり、よほどこの機構に自信があるか、キャップ自体がポンコツかのどちらかだ。
 センチュリー #3776は、全体的なフォルムもペン先のデザインもモンブランコンプレックス丸出し。黒軸金トリムの仏壇デザインの通常モデルにホワイトスターのデカール貼り付けてみたい。
 ・・・どうしてもプラチナには辛口になるな。

 限定モデルのセルロイドは、誰かに贈りたいと思う数少ないモデルの一つ。蒔絵モデルも1本持ってるけど、蒔絵?デカールじゃないのこれ。ちょっと贈りたくないね。性能自体にはそれほど不満は無いけど商売の仕方が気に食わない。
 自分で買うなら、プロシオンは面白いモデル。このモデル、万年筆好適用紙との相性はそれほど良くないどころか「悪い」と言っても良いんだけど、コピー用紙にはものすごく相性が良いという不思議なペン先で、日常用途に向いている。

パイロット

www.pilot.co.jp

 このブログ最初の記事
hatoatama.hatenablog.com

で絶賛紹介しているパイロット。セーラーとは真逆のカラーの会社で、量産モデルのラインナップの豊富さと品質の安定感が最大の魅力。価格帯が同じモデルはペン先も同じものを使い、量産効果で値段も抑えているから金ペン先でも良心的な値段で、上位機種は値段の割に高級感もある。オーソドックスな定番モデルはカスタム742/743/823あたり。ペン先の性質が微妙に違うので、贈り物にはちょっと難しいかも。面白いのは「中軟」というペン先で、中字の太さながら繊細な国産万年筆の特徴を持ちながらサスペンションがしなやかで癖になる不思議な書き味。また、セーラーほどではないにしても振り切ったペン先のモデルがあることも特徴で、低価格のプレラにカリグラフィニブモデルがあったり、エラボーは「例のペン先」という動画で有名だったり。あの動画は真似しちゃ駄目ですけどね。最大手らしからぬ遊び心があるのが好き。
 工作精度の高さは特筆もので、嵌合式のキャップの精密感は世界でも最高なんじゃなかろうか。
 どのモデルを選んでも間違いがない。ラインナップも豊富で値段も手頃なので、誰に贈っても間違いがない。敢えてオススメモデルを挙げるとすれば、国産万年筆のオリジナル形態であるショート軸を復刻したElite 95s。キャップ部が長いから嵌合の精度の高さを存分に味わえる。キャップをポストして使用形態にしたときのフォルムの美しさは素晴らしい。ショート軸は70年代には各メーカーからよく出ていたそうなので、年配の人には懐かしいだろうし若い人には新鮮だろう。しかも14金ペン先でお値段手頃。難をあげるとすれば、尾部が短すぎてインクの残量がほとんどわからないこと。
 パイロットのペン先は他メーカーよりペンポイントが大きめで好みの分かれる書き味だけど、現行モデルのペン先は最近の好みに合わせてやや固め。一昔前のペン先は柔らかめだったそうで、その頃のペン先を装備しているのがカエデだそうだ。木軸モデルは世界で1本の木目のオリジナル感と、使い込むほどに手の脂で馴染むので、これこそ贈り物に好適。値段もそんなに高くない。
「ひと目でパイロットの万年筆だと分かる」という要素がほぼ全く無いのが、この記事の趣旨に反する欠点とは言える。

番外:オススメできないブランド

モンブラン

 万年筆のド定番ブランドといえば誰もが思い浮かべるモンブランだが、筆者としては贈り物にモンブランは避けたい。というのは、モンブランの万年筆はもはや装飾品であり、価値と値段のバランスが悪すぎる。したがって相手を非常に選ぶ。若い人相手には、モンブランの万年筆を持っているだけで「生意気」というようなクサレオヤジが居たりもする。ブランドシンボルのホワイトスターの主張が激しいだけに余計に。
 年配の人に対しても考えものだ。そもそも文具を贈るのは「より励め」というメッセージがあるそうで、目上の人への贈り物としては不適切であるという謎ルールも存在する。また、古くからのモンブランユーザーには、最近のモンブラン製品の評判はすこぶる悪い。さらに、高級文具店やデパートでなければモンブラン製品自体を扱っていないことも多い。インクカートリッジはヨーロッパ統一規格なので他メーカーでも良いのだが、純正インクやメンテナンス道具の入手性が悪い。あらゆる意味で贈り物としては全く向いていない。
 以上はあくまでも「初心者さん」向けであり、分かっている人同士だったら全く問題ない。むしろビンテージとかならモンブランは最高の贈り物になる。

アイドルにハマった話

久々の投稿である。
夏になると駄文を書きたくなるらしい。この1年で筆者自身の状況は大きく変わったのだが、変わることはすでに1年以上前から分かっていたことで別に感慨があるわけではない。

筆者は90年代の半分以上を大学生として過ごした。その頃のポップミュージックシーンは今に続くグループアイドルブームの先駆けとなるモーニング娘。がヒットしていた。
修士課程のときに研究室の野郎連中で学会に行くのに、金は無いけど時間はある学生のやることだから片道500km以上をボロ車に乗り合ってワイワイと出かけたときの思い出。研究室メンバーの一人がモーニング娘。の大ファンで、別の一人がSPEEDの大ファンだった。筆者ともう一人は芸能に大して関心がなかったので、メンバーの名前は知ってるし商店街の有線では常にここらへんが流れていたので楽曲も知ってるよ、でも歌割りはもちろん顔と名前も一致していない程度だった。
モー娘。ファンとSPEEDファンがそれぞれフェイバリットCDを車に持込み、8時間以上に渡るロングドライブの車内はモー娘。とSPEEDが入れ代わり立ち代わりの状態。二人ともファンではあるもののドルオタというほどでもなかったのでケンカにもならず、彼らが講釈してくれる解説はそこそこ楽しかった。

小室哲哉...だと...?

筆者は今で言うところの絵に書いたような「陰キャ」で「ハスって」いたので、ポップミュージックシーンにはついていけず関心がないフリをしていたが、それでも流れ込んでくるのは時流を代表する音楽である。今で言うなら米津玄師やOfficial髭男dismの楽曲を聞かない日がないくらいなのと同様に、当時は小室サウンドが絶えない日がなかった。小室哲哉は自身のグループの他に多くのグループに楽曲提供していたのだが、こう言うとファンに怒られることは承知で、いわゆる「ハンコ」であり、どこのグループの楽曲か全くわからないからただひたすら「小室サウンド」以上でも以下でもないというのが正直な感想。
その後、小室哲哉自身は色々あったのは皆さんのほうがよくご存知だろうし、むしろ小室アンチだった私にはどうでもいいので触れない。

そこに来て久しぶりに小室哲哉の名前を聞いたのは、乃木坂46の最新曲「Route 246」である。
いろいろな論評を読んでみると、小室世代にも突き刺さるあらたなファン層の獲得なるか、というものも散見された。小室アンチだった私にはそれこそどうでも良い話だけど、YouTubeでのテザーや地上波放送でも流れることが増えて嫌でも耳にする。そこで感じたのは「絶望」だった。
・・・ハンコのままやん・・・
20年以上も経ってまるで変わっていないのは、痛いを通り越してイラつきさえ覚えた。若かりし日の美しい思い出ではなく痛い思いのほうが想起された。

乃木坂46

モーニング娘。ブームの落ち着きと入れ替わるように台頭したのがAKB48で、AKBブームの真っ只中に同じく秋元康プロデュースで立ち上がったのが乃木坂46であるのは別に解説の必要もなかろう、私より世間のほうがよく知っているはずだ。
友人が大ファンだったモーニング娘。でさえメンバーの識別ができていなかったのに、AKBのメンバーの識別ができるわけがない。さらに、似たりよったりの「年頃の女の子の十把一絡げの束売り商法グループ」が増えたところで完全に関心の外。AKBのメンバーの誰が好きとかいう話題には完全についていけず、とりあえずよく目にする名前を挙げておくという程度では話に乗ったくらい。

そんな「陰キャ」で「ハスった」私が「アイドルにハマった話」になるのはどういうことか。

一昨年のこと、大学で講義をしているとき、担当の女子学生が妙に元気が無かった。距離感に気をつけなければならない、一歩間違えるとかなり危険な線にはなるが、「どしたん?なにかあったん?」と聞くと、「なぁちゃんが卒業するって…」と返ってきた。

ちょっと何言ってるのかわからない。

そこで、いろいろ情報収集に乗り出した。筆者は、一応、研究を生業にしている(いた)人間である。情報収集と整理・分析は、最低限の素養として持っているつもりではいる。

「なぁちゃん」。乃木坂46西野七瀬のことであるらしい。年頃の女の子だけあって可愛らしいのだが、線が細くて、繊細とか可憐というよりどことなく陰湿な印象さえ抱かせる感じの女性だった。
いくら芸能音痴とはいえ、乃木坂46白石麻衣くらいは名前と顔は知っている。超上から目線で言うと、白石麻衣は「美人だけど好みじゃない」のであまり関心もなかったのだが、西野七瀬白石麻衣とダブルエースと言われているらしい。
乃木坂46に対する認識は、2018年における関心のスタート地点でこの程度だった。

調べていくうちにいろいろ分かってくると、あとはハマるのは早かった。ただそれだけの話(笑)
あと、現在の居住地がテレビ東京番組が見れるので、乃木坂46欅坂46と、当時「けやき坂」であった日向坂46の冠番組が見れたこと。「けやき坂」だけは最後まで正体を理解できず、録画予約番組表の「ひらがな推し」がAKB商法便乗のグループのさらにパチもんの地下アイドルかと最後まで思っていたくらい。これは別で語りたい。
つまり、ニワカもニワカで、アイドルグループに対する世間一般の印象はこんなもんだということ。
年齢も年齢だし、そもそも年頃の女の子を束売りしたり物販で釣る商法そのものには反感を持っているので、ライブやら握手やらなんやらに乗るつもりは毛頭ないのだが。

推し1

長らく一緒に研究の仕事をしている人が、大抵の人が大阪の人に対して描いているであろう印象そのままの大阪人。明るくて頭の回転の早い、おしゃれで魅力的な女性である。
この印象そのままだったのが松村沙友理で、地頭のキレの良さに基づく対応力の高さ、普段から全力でアイドルであることを演じているからか、舞台演劇鑑賞が趣味でそれなりに一家言あるつもりの私が素人目に見ても女優としてのポテンシャルの高さがあり非常に魅力的。少々癖のあるくっきりとした濃いめの顔とスタイルの良い長身は、目線で演じることができるのでアップで抜かれても引きでも映え、映画向きだと思う。ニワカ乃木坂ファンなので、彼女のスキャンダルをリアルタイムでは知らないので、悪い印象はまったくない。一見、大阪人キャラを前面に出した明るいキャラクターも、彼女自身の本質ではないことも知れば魅力の一つ。

推し2

一番注目のメンバーを変えることを推し変というらしいが、もともと束売りしてるんだから、お気に入りが複数いても当然だろ?
ってことで、お気に入りその2が久保史緒里。最近、音楽番組でアイドルらしからぬ歌唱力を披露して一般層からも注目を集めた、若干19歳になったばかりの3期生メンバー。もはや最長老群の位置にある松村沙友理とは対局の若手のホープ
2018年半ばからのニワカファンなので3期生の加入とか知らないし、そもそもモー娘。やAKBにすら興味がなかったので、加入期という概念を理解したのは最近なんだけど。きっかけは、やはりなにかの音楽番組で、歌唱力上位メンバーとされる生田絵梨花衛藤美彩とともに出演して披露した「さらばシベリア鉄道」を聞いてから。

・・・普段大学生と接しているから気分だけは若いつもりでいたけど、たいがいおっさんだな・・・

女性アイドルとしては当代随一の多才な天才と評される生田絵梨花とは別の意味で、努力型の衣をまとった天才型。当代を代表するアイドルグループの一員になる時点で尋常ならざる努力だけでなく天賦と運賦を備えているのは間違いないけど、久保史緒里に関しては「尋常でない努力をできる天才」の印象で、研究者肌を感じさせ、同類としてのライバル意識というか尊敬の念すら覚える。
sakamichi48.blog.jp

「台本渡すと一読しただけで自分の中で答えが出せてかつ本番では台本に頼らない」
頭の良い子だという印象はあったけど、こういう評価が貰える人はそう居ない。

研究者肌の印象はまさにそのとおりで、加入前から熱心な乃木坂ファンであり、乃木坂46に関する知識量や観察眼、洞察の深さによるメンバー愛から「最強のガチオタ」と評されるのは非常に好印象。

けんきゅうのおしごと

研究者は論文を書いてナンボである。Publish or Perish(出版せよ、さもなくば破滅を)と言われる、それなりにシビアな世界である。
そもそも、Publishができる舞台に上がることがそんなに簡単ではない。不安定な立場で日々研究に勤しむポスドクは、いつかのメジャーデビューを夢見て路端でギターをかき鳴らすストリートミュージシャンとなにも変わるところはない。
その場所を維持することも簡単には行かない。そして、舞台にある大半も、世の中に対して毒にも薬にもならないどうでもいい鼻紙を、ただひたすら地位の維持のために出し続けている。CNSに載るような研究は、よほど良い研究メンバーや上司、才能だけでなく運を手にしなければほとんど叶わない。選抜メンバーに入るようなものだ。これは、他の業種でも言えることだが、アイドルグループと大差なんてない。
もともと探究心が強く情報収集・整理・分析能力に長けた研究者は、興味の方向がアイドルに向けばガチオタになるのはある意味当然の帰結
研究者の素養を持った子が憧れの対象の一員になり期別曲とはいえセンターを張ったのは、未だに研究者としての夢を捨てきれていない自分には眩しすぎる。しかも地頭の良さと努力を惜しまない姿勢には勝てそうにない。それが久保史緒里から目を離せない理由。

あと、久保史緒里の純和風な雰囲気と頭の良さの方向が高校のとき好きだった子にとてもよく似ているのは、非常にどうでも良い話。
写真のアングルによっては垂れ目気味の顔立ちもそっくりでドキッとしたおっさんの思い出。

続 Majority と Minority

ここで駄論突っ込んでブログ主さんにご丁寧なご返答をいただきました。
yuhka-uno.hatenablog.com
横入りの左翼さんはしらね


d.hatena.ne.jp
 まさにこういうことだったんですね。[ major ] と [ minor ] は定量性の多寡ではなく質的要素を含んでいて、minorは「主に対する亜」という従属性を包含した言葉でありました。
 そして、[ majority ], [ minority ] の持つ質的要素を把握していないのはネイティブでも同じということを初めて知りました。

これもうね、言葉というか言語レベルで問題あるんじゃない?

じゃあなんて言えばいいかって、「社会的弱者」としか言いようがない?

弱者とは誰か

 うーん、私、発達障害気味だけど弱者って自覚ないしなあ。むしろ大迷惑大魔王だし。
 言葉の定義にやたらと突っかかるところとか発達障害丸出しだし、大人になって多少擬態できるようになったけど、ネット空間ではいまだにこれだ。社会人ひよっこの頃までは、絵に描いたような定型発達の妹が羨ましくもあり「これだから定型は」と思ったりしたけれど、妹には妹の悩みがあり、やっぱり兄妹だなと思うこともあったりして、こういう性質はスペクトラムであることを身をもって学んだ今では定型 vs 当事者という二項対立が意味がないことを知っている。だから「怒れるマイノリティ」と「鈍感なマジョリティ」という分類が不毛であることも考えなければならないと思う。そもそも人間はマジョリティ・マイノリティという属性を持っているわけではない。一個人の中にマジョリティとマイノリティが混在しているものだ。

不幸な対立構造

 ……これもトーンポリシングっていうの?
 だったらもう何も言えない。どこからどこまでが控えなければならない言葉なのか分からないこの恐怖がポリコレ棒なんだ。

 ・・・なる
 マイノリティはこの恐怖を味わい続けてきたんだから、今こそポリコレの怒れる正義の鉄槌に怯えるがいい。ってことならば。よろしい、ならば戦争だ。ということになるがおk? それが人間として正常な反応よ。よもやマジョリティ属性にはその権利は無いとは言いはすまいな?
 歴史上、民族紛争の発端てのはだいたいこんな感じよ。民族問題なら先祖(過去性)という交じり合わない属性の二項対立が成立してしまい残念なことになることがあるが、もともとありもしない属性の型にわざわざ嵌めて対立軸を作り出してるように見えますね。

発達障害なりたがり

 ポリコレ棒でタコ殴り覚悟で言えば、ぶっちゃけLGBTって興味無いし。良くも悪くも。どうせ自分には共感能力無いから共感しようとするだけ自分が無駄だと分かってるから。
 難病を患っている人に病気を告白された時、「ふーん、そ。で、明日までの課題の件だけど……」ってすげー塩対応したけど、それ以外の対応は今でも思いつかないよ。多分、幼馴染に「俺ゲイなんだけど……」って言われても「へー、そう。で、昼飯何にする?」だと思うわ。
 障害者に対する意識も、単なる確率論でしか捉えていない。先天性疾患に対しても、ハーディ・ワインベルグの法則通りにしか捉えていない。500分の1なんて商店街の福引きよりももしかしたら高い確率で持っている因子をたまたまホモで担いじゃった人は自分を肩代わりしてくれただけだし。それ以上の興味は無いというか、おそらくその精神的な苦痛は理解できない。だから精神的苦痛を差別根拠に掲げるLGBTのことは全く理解できないんです。

 だってしょうがないよね、発達障害だから♪
 って言ったら許してくれますか?

 ここまで書いたら、発達障害って楽だわーってちょっと思った。
 なるほど、だからなりたがり屋さんがあとを絶たないのか。
 自分だって「気味」なだけで診断受けているわけではないけどね。
 それにそもそも
gigazine.net
古い話だけど有名な話。実際そう思う。


 物理的な障壁は理解できるので社会福祉に貢献することは厭わないけど、カワイソウだとは思わない。そういう意味では弱者差別を私はしていないと思う。まあ、されてる側ではないのであくまでも思うだけですが、このスタンスを「鈍感」だと言われたら「ごめんなさい」としか言いようがないわな。で、どうさせたいわけ?

おまけ

あ、そう言えば逆もあって、「私、実は在日なんだよね」と言われた時。数年前にマイナンバー導入で通名から本名にした在日がたくさん出た時のこと。
「あっそ、で? それだけならもうあっち行ってくれる?」
もともとその人のこと嫌いでしたから、在日だから嫌いになったんじゃありません。
妙に納得したのは、差別意識だという自覚はある。

上司の長芋を運んだ

「鳩くん、ちょっと手伝ってくれんか。力仕事だ。」
「いいですよ」
若くはないのだがこの年齢で若手扱いされる業界。上司のご実家から送られてきた長芋を事務所から駐車場まで運ぶ任を仰せつかった。
「台車ないときついぞ」
「そんなにあるんですか!」
「あとで分けてやるwww」
「料理しないからいらねっすw」

事業所には外来の人も多く出入りするので、事務所と駐車場は結構離れている。さてどのルートを通ると楽かな、と敷地内地図を頭に広げる。
エライ人が出入りする車寄せがある建物に回ってエレベーターで車寄せに回ろうかと考えたが……
「上司、無理ですわ」
「なんで?」
「だってうち、全然バリアフリーじゃないじゃないですか。渡り廊下の前後にももれなく階段付きです。」
「そういやそうだな。じゃあ玄関に車回して来るから待ってろ。」
「玄関にも階段ありますよね」
「そのくらい耐えろ」

バリアフリーユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザイン」って一時期流行ったけどやっぱりただの流行語だったか。
 バリアフリーは文字通り「障壁排除」で、一番わかりやすいのは車椅子用スロープだ。このスロープが結構曲者で、実際に体験してみるといいけど、自分の体重の乗った車椅子で自力で登るのはかなりしんどい。介護者が押すにしても相当負担がかかる。事業所はそれほど古い施設ではないが障害者に縁が薄い施設なので、このご時世に詰めが甘いというか、一番勾配のきつい出入り口に申し訳程度のスロープをつけただけで肝心の玄関が置いてけぼりという状況だった。このことは、台車で建物を移動するお仕事を仰せつかわなければ気づかなかった。
 スロープだったら車椅子の人だけじゃなくてみんなが楽だよね、というのがユニバーサルデザインバリアフリーが障害者のための措置であるのに対して、障害者に楽なことはみんなが楽なんだからそうしようよという発想だ。障害者の人にも引け目を持たせず健常者も楽できるんだから素晴らしい発想の転換だと思うのだが、発想としてイマイチ定着していない感というか、用語自体「バリアフリー」に逆戻りしている気がする。
 まあ、言葉の問題なのでどうでもいいっちゃどうでもいいんだけど、どちらで言うにしてもネックになるのはお金だ。階段ならば30度勾配にできるものをスロープで10度以内にしようとしたらそれだけ敷地が必要になる。ちょっと計算してみる。
  tan30° = 0.58 なので
   高さ1mの段差のためには1/0.58 = 1.7m の階段用敷地が必要
  tan10° = 0.18 なので
   高さ1mの段差のためには1/0.18 = 5.6m のスロープ用敷地が必要
 なんとなく思ってたよりかなりでかい差だな。

ユニバーサルは意外に難しい

 ネットから無断で拝借した画像で申し訳ないが、ここに2つのノンステップバスの画像をあげる。

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井笠鉄道ノンステップバス

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仙台市交通局ノンステップバス


違いがお分かりだろうか。
分かった人はバスマニアかも。


この2つ、スロープの展開のし方が違うのだ。
井笠鉄道のバスは引き出し式で、床の下からスロープを引き出す。
仙台市交通局のバスは、車内のドア内側の床を反転して展開する。

 構造的にも価格的にも圧倒的に手軽なのが床面反転式だ。
 しかしこの方式には致命的な欠陥がある。
 お分かりだと思うが、反転する部分に人は乗れないのだ。つまり、扉のすぐ内側まで立ち客が居る状況では使えない。こういう状況ではそもそも車椅子が乗れる余地が無いと言えばそれまでだ。申し訳ないが、満員バスで車椅子に譲るほどの余裕は健常者にだって無い。
 だからスロープは諦めろと言うのは当然違う。昼間のベビーカーはどうする? 乳母車のおばあちゃんは? そもそもノンステップって車輪のついたものだけが対象じゃなくて、部活でアキレス腱切って松葉杖の高校生にだって、もちろん疲れたおっさんにも優しいよねというのがユニバーサル。
 じゃあみんなハッピーな引き出し式にすればいいじゃんというとそれがそうもいかない。
 量産効果を補ってなお余りある高コスト構造なのだ、これは。

 ちょっと車の構造に詳しい人なら分かると思うが、バスやトラックはフレーム構造で床下のフレームで車体の荷重を支えている。このフレームには、エンジン・トランスミッション・操舵装置等の走行機器類が全て組み込まれる。その上に客室という箱が乗っかっていると考えてもらえばいい。
 ノンステップバスを実現する前に低床バスが開発されたが、これは従来床下に設置されていたエンジンを最後尾席後ろにエンジンルームを設けて積んだので、容積率が著しく低下した。
 ノンステップバスはさらに、前輪を左右独立にする必要が生じた。これだけでもものすごい高コストだ。
 さらにスロープ床下収納式だと、フレームラダーの変形配置や薄型化とそれに伴う強度低下の補償など、とても量産効果で開発コストを吸収できないくらいの製造コストがかかり調達コストに跳ね返る。そのコストは誰が負担するかとなると、事業者と利用者だ。スロープ床下収納式ノンステップバスの調達が「合理的で即応可能な範囲」の配慮かと言えば、そうとは思わない。
 落とし所は「車内が窮屈になるけど床面反転式スロープ付きノンステップバスで我慢して」というのが結局現実的なところ。
 ユニバーサルとは、「みんなが楽」であると同時に「みんながちょっとずつ我慢」の我慢量最小化ということだ。

 ポリティカル・コレクトレスは確かに正しい。が、ポリコレ信者が古の遺産として目の敵にする「最大多数の最大幸福」はユニバーサルと同義であるということも忘れてはならない。